お役立ち情報

借入申込のポイント その1

借入申込する際のポイントについて、お話していきます。まず、どこに借入申込するかについてです。

借入が必要なとき、前回お話した借入の種類のうちから、どんな借入のイメージを持たれるでしょうか。
たとえば、開業当初等はじめて借入するときについて考えてみましょう。
まず、どこに依頼するべきかも、戸惑うことと思います。事業を始めていれば、売上の入金口座を開設した銀行があるはずですから、口座がある銀行に依頼することになると思いますが、口座があるからと言って融資をしてもらえる訳ではなりません。

おすすめは、日本政策金融公庫(国民生活事業)です。日本政策金融公庫は財務省所管の特殊会社であり、国の政策のもと政策金融を機動的に実施するのが基本理念です。つまり、民間金融機関のような与信判断だけではなく、政策的な判断も入るので、その分「借入がしやすい」のです。はじめて借入するのであれば、日本政策金融公庫(国民生活事業)へ。
もともと、いきなりプロパー融資を申込んでも、まず無理でしょう。銀行は「実績」を求めてきます。それは信用の実績です。具体的には、銀行にリスクのない形態の取引での仕振りを見るのです。その様な場合、まず銀行が勧めるのが預金担保貸付日本政策金融公庫です。商工会や商工会議所経由で、保証協会付の制度融資を利用する手もあります。
銀行は、預金担保貸付や日本政策金融公庫の借入、保証協会付貸付等の返済が期日に確実に行われるのかを見ています。それらを約定通りに履行するという実績を積んで、そして、事業を順調に拡大することによって、次のステップへと進むことができます。
つまり、開業直後には、預担や公庫の借入あるいは保証協会付の制度融資で資金を繰り回さざるを得ない場合が多いのです。開業から何年か経過して、「事業をしっかり継続できる」という実績ができてから、通常の保証協会付融資に進むのが一つのパターンです。
預金担保貸付は、定期預金の範囲内で借入するものなので、定期預金がなければ成立しません。また、解約する代わりに借入することになるので、資金が増えるわけでもありません。銀行が預担しか対応してくれない場合には、信用の実績作りとして割り切って考えるしかありません。
日本政策金融公庫(国民生活事業)の借入についても、約定返済を守ることで、決済口座の動きが、銀行への信用の実績になっていきます。
なお、日本政策金融公庫には、「国民生活事業」「中小企業事業」「農林水産事業」があり、それぞれ取り扱う融資が異なります。これは、日本政策金融公庫が、「国民生活金融公庫」「中小企業金融公庫」「農林漁業金融公庫」の三つが統合してできたものだからです。農林水産事業は農林水産事業者の資金調達用のものですが、国民生活事業と中小企業事業の違いは何でしょうか。ざっくりと言うと、国民生活事業小規模事業者向け小口事業資金の取扱い、中小企業事業はそれよりも規模の大きな中小企業向け長期資金(基本有担保)の取扱いということになります。開業資金については、通常、国民生活事業を利用することになります。
開業資金として、保証協会付の制度融資申込も可能です。滋賀県信用保証協会では、開業資金として「創業枠」「創業サポート枠」「女性創業枠」が用意されています。いずれも責任共有制度対象外です。つまり保証割合100%なので、保証がおりれば銀行は融資してくれます。県が保証人になって100%保証してくれるので、銀行としてのリスクがないからです。
ただし、保証協会自体の審査があります。また、金利以外に保証料(1%)がかかります。そして、申込窓口は商工会商工会議所県産業支援プラザになります。

以上、開業時の借入の概要でした。
次回からは、借入審査の内幕と、その対処法等について述べていきたいと思います。

スムーズな融資実行へ向けて その2

前回に引き続き融資の種類について見ていきます。

個別稟議、極度稟議、一括稟議の分類
原則的には貸出案件1件ごとに稟議書が作成されます。これを個別稟議と呼びます。
それに対して、反復的な借入申込があるような場合に、優良な取引先に対して貸出限度額を決めてしまうことがあります。一定期間内、極度範囲内で反復的に貸出を実行するための貸出極度額の稟議を極度稟議と呼びます。
また、同質の貸出で、実行時期が接近しているものをまとめて稟議する場合があり、それを一括稟議と呼びます。この場合、まとめる稟議は、次に説明する資金使途の分類が同じものに限定されます。

資金使途による分類
融資した資金が何に使われるかによって、以下のように資金使途が分類されます。
a.経常運転資金:仕入、生産、販売等の営業活動に伴い経常的に必要となる運転資金です。この経常運転資金のうち、繰り返し継続を続けるものを、ころがし(コロ単)と呼ぶことがあります。
b.増加運転資金:売上高の増加または収支条件の変化に伴い必要となる運転資金です。
c.季節資金:季節的要因によって、一時的に必要となる運転資金です。たとえば、バレンタインデーに備えてチョコレートの製造を増やすための資金等です。
d.在庫資金:在庫を積み増す場合に必要となる資金です。
e.決算・賞与資金:納税、配当金、役員賞与等を支払うための決算資金と従業員賞与を支払うための賞与資金のことです。
f.減産資金:減産に伴い発生する資金需要に対応するものです。
g.つなぎ資金:別途財源が確定している場合の資金調達までの一時的資金需要に対応するものです。
h.月中資金:支払い先行による月中のごく短期間の資金不足に対応するものです。
i.長期運転資金:1年を超えて必要となる運転資金です。
j.設備資金:工場、機械、本社建物等への設備投資のための資金です。
k.貿易関連資金:輸出入取引に関連して発生する資金需要に対応するものです。外為与信とも呼ばれます。
l.赤字補填資金:赤字を埋め合わせるための資金のことで、融資対象となりません。運転資金として申込んでも赤字補填資金と判断されれば、否決されます。

以上、融資については様々な区分けがされます。それぞれの言葉の意味が頭に入っていると銀行員との話し合いの際に役立つでしょう。
そして、どの様な種類の融資を申込むのか、事前に整理してから交渉に臨むことが重要です。例えば、「手形貸付を部店長権限の範囲内で、新規個別稟議、プロパーで経常運転資金として申込む」と言うように明確なイメージを持って交渉に臨むのと、単に「資金が必要だから貸してほしい」との思いだけで交渉するのとでは銀行の対応が違ってきます。

では、実際に借入申込する際の注意点、ポイントいついて、次回からお話していきます。

スムーズな融資実行へ向けて その1

これからしばらく、融資についてお伝えしていきたいと思います。

まず、融資の種類について見ていきます。
融資については、いろいろな区分の仕方があります。区分と言っても金融機関側で勝手に行っているもので、借りる側からすれば、借りられれば何でもいい訳です。しかし、交渉相手の手の内を少しでも多く知っておくことは、交渉を有利に運ぶためには欠かせないことです。融資のシステム概要を整理して理解しておくことは、金融機関と借入交渉を行う際に、決して無駄にはなりません。
以下、若干長くなりますので、ご存じの部分は飛ばし読みしてください。

貸出科目による分類
貸出科目としては、商業手形割引、手形貸付、当座貸越、証書貸付等があります。

商業手形割引は、販売先から受け取った手形を銀行に割引いて(買取って)もらうものです。手形期日に手形交換所で決済された資金で返済となります。
手形貸付は、銀行の借入専用の手形に記名押印して、手形額面の金額を借入するものです。手形期日までの借入となりますが、サイト3か月程度の手形を切ることが多く、短期の借入に使われます。
当座貸越は、当座預金の赤残を一定額まで認めるものです。赤残当貸は、本来は一時的な資金不足に備えるものですが、べったり張付いてしまうこともあるので、銀行は積極的には取り上げません。また、個人の総合口座預金にセットされた定期預金に見合う貸越しも当座貸越の一種です。
証書貸付は、金銭消費貸借契約書に記名押印して借入を行うものです。約定返済付きの長期の借入の際に使われます。
支払承諾は、銀行が保証業務を行うもので、やや特殊です。こんなのもあるという程度で結構です。

融資の権限による分類
支店長の権限内で貸出できるものを店内稟議または部店長権限といいます。各支店毎に、個別案件自体の額や融資先の融資額合計について、融資先の格付に基づいて、部店長権限の金額(枠)が細かく決められています。そして、支店の格と部店長権限枠は比例して大きくなります。つまり大きな支店ほど部店長権限枠が大きいのです。
また、部店長権限の中でも預金担保付融資(預担)は別枠となり、即決でOKですし、信用保証協会の保証付きの融資(協会付)も別枠で、保証がおりれば、ほぼOKです。
なお、これら預担、協会付以外の融資をプロパー融資と呼んでいます。
部店長権限に対するのが、本部稟議または本部権限と呼ばれるものです。こちらは、支店から上げられた稟議を本部(本店)が決裁することによってはじめて融資実行できます。本部の決裁についても、金額により次長決裁、部長決裁、役員決裁等に分かれます。
当然、決裁ハードルの高い順は、役員決裁、部長決裁、次長決裁、部店長権限の順になります。

新規、継続の分類
新規稟議、増額稟議、継続稟議、折返し稟議という分類があります。
最初の三つは何となく分かると思いますが、「折返し」というのが分かりにくいと思います。これは、約定返済付きの融資について返済が進んだ時点で、金額復活させる融資というイメージです。

まだ、他にも分類の仕方がありますが、続きは後日といたします。

社会福祉法人 理事会について

Ⅰ.理事会の招集について【法第45条の14】
1 理事会は、各理事(理事会を招集する理事を定款又は理事会で定めたときはその理事)が招集します。
なお、理事会を招集する理事を定款又は理事会で定めたときは、その他の理事は招集権者で ある理事に対して、理事会の目的である事項を示して、理事会の招集を請求することができま す。この請求があった場合には、請求日から5日以内に、理事会の招集通知(請求日から2週 間以内の日に理事会を開催するものである必要がある)が発せられない場合には、その請求を した理事が理事会を招集することができます。
2 理事会を招集する者は、理事会の日の1週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっ てはその期間)前までに、各理事及び各監事に対してその通知を発出する必要があります。 ただし、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集通知を発出せずに理事会を開催する ことができます。(招集通知の省略) なお、理事会の招集通知は、各監事(監事の全員)に対しても発出しなければならないことに留意してください。

Ⅱ.理事会の決議に関する注意点【法第45条の14】
1 平成28年改正法施行前は、定款に定めることにより、欠席した理事の書面による議決権の 行使(書面議決)が認められていたところですが平成28年改正法による改正後においては、 理事会における議決は対面(テレビ会議等を含む。)により行うこととされており、改正前の 書面議決の取扱いを行うことはできません。➡「えっ、そうなの?」とおっしゃる方がたまにいらっしゃいますが、書面決議はもうありません。
2 理事が理事会の決議の目的である事項について提案をした場合において、理事の全員が書面 又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは(監事が当該提案について異議を述べたと きを除く。)、当該提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなされます。(決議の省略) また、理事、監事又は会計監査人が理事及び監事の全員に対して理事会に報告すべき事項を 通知したときは、当該事項の理事会への報告を要しないものとします。(理事会への報告省略)ただし、理事長等が、 自己の職務の執行状況について理事会に報告するときは、実際に開催された理事会において行う必要があります。

Ⅲ.理事会議事録について【法第45条の14、15】
1 理事会議事録には、次に掲げる内容を記載する必要があります。➡理事会議事録の必要記載事項
①開催日時
②開催場所
③出席者氏名
④議長の氏名
⑤議案
⑥議案に対する発言内容
⑦議案に対する評決結果
⑧特別の利害を有する理事の氏名
⑨議事録署名人
⑩議事録署名年月日
⑪理事会が次に掲げるいずれかのものに該当するときは、その旨
ア 招集権者以外の理事が、理事会の招集を請求し、招集されたもの
イ アによる請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を 理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合に、その請求をした理事が招 集したもの
ウ 理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又法令 若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときに、監事が 招集を請求したもの
エ ウによる請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を 理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合に、その請求をした監事が招 集したもの
*議事録作成者の氏名記載は法的には必要ありませんが、評議員会議事録と統一して、記載するようにしておいた方がよい(うっかりミスを防げる)と思います。
2  理事の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をし(監事が当該提案について異議 を述べたときを除く。)、当該提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなされた場合の議事録には、次に掲げる内容を記載する必要があります。➡上記決議の省略手続です。
(1)理事会の決議があったものとみなされた事項の内容
(2)(1)の事項の提案をした理事の氏名
(3)理事会の決議があったものとみなされた日
(4)議事録の作成に係る職務を行った理事の氏名
3 理事、監事又は会計監査人が理事及び監事の全員に対して理事会に報告すべき事項を通知し、当該事項の理事会への報告を要しないものとされた場合の議事録には、次に掲げる内容を 記載する必要があります。➡上記理事会への報告省略です。
(1)理事会への報告を要しないものとされた事項の内容
(2)理事会への報告を要しないものとされた日
(3)議事録の作成に係る職務を行った理事の氏名
4 議事録署名人
議事録署名人については、定款で定められた署名人が署名又は記名押印(これも定款で定められています)を行うことになります。
「出席した理事及び監事は、議事録に署名し又は記名押印する」(法第45条14の6)が原則ですが、
「出席した理事長及び監事は、議事録に署名し、又は記名押印する」(同上( )書にて定款で緩和することが認められています)とする場合が多いです。➡条件緩和が認められているものは、できるだけ利用して管理を楽にするべきです。

社会福祉法人 評議員会について

評議員会についての注意事項を整理していきます。

Ⅰ.評議員会の招集について【法第45条の9】
1 評議員会の招集は、下記を除き理事会が招集します。
(1)評議員が、理事に対し、評議員会の目的である事項及び招集の理由を示して、評議員会の 招集を請求した場合、その請求後遅滞なく招集の手続きが行われないときに、請求をした評議員が招集するとき。
(2)評議員が、理事に対し、評議員会の目的である事項及び招集の理由を示して、評議員会の 招集を請求した場合、その請求のあった日から6週間(これを下回る期間を定款で定めた場 合にあっては、その期間)以内の日を評議員会の日とする評議員会の招集の通知が発せられないときに、請求をした評議員が招集するとき。
2 評議員会を招集するには下記の事項を理事会の決議により定め、理事は評議員会の1週間( 又は定款に定めた期間の)前までに評議員に書面又は電磁的方法(電子メール等)により通知 する必要があります。 なお、電磁的方法で通知する場合には評議員の承諾を得る必要があります。 また、評議員の全員の同意があるときは、招集の手続きを経ることなく、開催することがで きます。➡招集通知省略の手続です。
(1)評議員会の日時及び場所
(2)評議員会の目的である事項がある場合は当該事項(議題)
(3)評議員会の目的である事項(議題)に係る議案(議題=議案となる場合は不要。)の概要 (議案が確定していない場合はその旨)

Ⅱ.評議員会の決議に関する注意点【法第45条の9】
1 評議員会は、あらかじめ招集通知で定められた議題以外の事項を決議することはできませ ん。➡つまり、理事会議決されたことしか議決できません。理事会で決議されていない事項を評議員会で議決してしまっていることが、たまにあります。要注意です。
2 理事が評議員会の目的である事項について提案した場合において、評議員の全員が書面又は 電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の評議員会の決議があ ったものとみなされます。➡決議省略の手続です。
また、理事が評議員の全員に対して評議員会に報告すべき事項を通知した場合において当該 事項を評議員会に報告することを要しないことにつき評議員の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の評議員会への報告があったものとみなされま す。
3 以下の事項については特別決議(議決に加わることができる評議員の3分の2以上の賛成)が必要です。【法第45条の9第7項】
(1)監事の解任
(2)役員等の損害賠償責任の一部免除
(3)定款変更
(4)法人の解散
(5)法人の合併契約の承認

Ⅲ.評議員会議事録について【法第45条の11】
議事録に記載しなくてはならない事項や、決議しなければならない事項、招集、運営のルールが細かく定められています。
また、その場では話し合ったが議事録には記載しなかった事項が後々問題視されることのないよう注意が必要です。
1 評議員会議事録には、次に掲げる内容を記載する必要があります。~議事録の必要記載事項
(1)開催日時
(2)開催場所
(3)出席者氏名
(4)議長の氏名
(5)議案
(6)議案に対する発言内容
(7)議案に対する評決結果
(8)特別の利害を有する評議員の氏名
(9)議事録を作成した者の氏名➡これが、よくもれます。
(10)議事録署名人
(11)議事録署名年月日
2 議事録署名人
議事録署名人については、定款で定められた署名人が署名又は記名押印(これも定款で定められています)を行うことになります。
「出席した評議員及び理事は、議事録に記名押印する」(定款例第14条2)あるいは、
「議長及び会議に出席した評議員のうちから選出された議事録署名人2名がこれに署名し、又は記名押印する」(同上但し書)とすることが多いですが、但し書の方をお勧めします。➡条件緩和が認められているものは、できるだけ利用して管理を楽にするべきです。

 

小規模事業者持続化補助金コロナ特別対応型 第三回採択

昨日、小規模事業者持続化補助金コロナ特別対応型第三回採択者発表されました。ネットがエラーとなってなかなか内容確認できずに焦りましたが、申請のお手伝いをさせていただいたお客様採択されていました。
結果発表まで通常より長く、ずっと胃が痛む思いで待っていましたが、採択されてホッとしました。……よかった。
第四回では三件の申請をお手伝いしていますので、今度は三倍胃が痛むのかしら。

第五回も追加設定されています(12月10日期限)ので、検討されている方、お手伝いさせていただきます。

社会福祉法人 役員等の選任について その3

就任の意思確認について
さて、滞りなく役員等の選任手続きが完了すれば、最後に役員等の就任の意思確認が必要になります。この意思確認に際して、役員等から提出を受ける書類についても注意が必要です。

評議員、役員の選任については、委任契約により法人との関係性が成立します。つまり、法人からのオファーに相手方が同意することで契約が成立しますので、委嘱状、就任承諾書、宣誓書、履歴書が必要となるのです。
その中で、委嘱状、就任承諾書には任期を記載しますので、正しく記載されているかチェックが必要です。

ここで、役員等の任期の考え方について、もう一度整理しておきましょう。例えば、評議員については、社会福祉法第41条において「評議員の任期は、選任後四年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする」とあります。(伸長も可能ですが、今はちょっと置いといて)これを順に検討していきます。
まず、選任後四年以内とは、例えば平成29年4月1日選任されれば令和3年4月1日以内であり、その最終会計年度は令和3年3月31日までの会計年度となります。その会計年度に関する定時評議員会は通常令和3年6月に行われる評議員会になります。この時までが任期です。
つまり、選任後四年とはいつか?その日時点で一番近い決算はいつか?を考えればよいのです。~年度、~会計年度、~年~月等が入り混じると混乱してしまいますので、具体的日付で考えるようにすると、はっきりします。
念のためですが、スタートは選任日であって就任日ではありません。法改正後最初の評議員の任期について4月1日から起算するのは特例であって、その後は飽くまで選任日が起算となりますので、この点もご注意ください。

また、誓約書での確認事項(欠格事由・特殊関係の有無・反社会的勢力の者でない事の確認等)に漏れがないかの確認も必要です。特に特殊関係の有無確認については、評議員・理事・監事で法律の条文が異なるので要注意です。~具体的には用紙の取り違えに注意です。用紙を間違えただけであっても、法人としての確認義務を果たしていないことになってしまい、結構大きな問題になってしまいます。

★以前お伝えした理事の要件の(6)特殊の関係については、就任時の誓約書で確認することとなります。理事の誓約書が評議員用のものとなっていることもよくありますが、これでは特殊の関係を確認したことになりません。念のために用紙間違いがないか確認をしていただければと思います。
★なお、印鑑証明は必須ではありませんが、法人登記等の為に提出受けていれば一緒に保管してください。
★以上の意思確認資料については、各評議員、理事、監事毎にまとめて保管、ファイリングすることをお勧めします。インデックスに各自の名前を書いて夫々に意思確認資料を綴じるのです。この作業をするだけで、中身の確認がしやすくなり、ミスが格段に減ります。
★なお、監事についての上記の保管ファイルには、「監事の選任に関する評議員会の議案についての監事の同意書」の写しについても一緒に保管ファイリングしておくとよいと思います。

社会福祉法人 役員等の選任について その2

昨日ご説明した様に、要件を満たす方を役員等の候補としたら、続いて具体的な選任手続きに入ります。その選任手続きの注意点を次にまとめました。理事会、評議員会、評議員選任・解任委員会の開催順序やそれぞれに必要な議決事項の整理をしておくことが大切です。

評議員の選任手続について

一般的な、評議員選任・解任委員会で評議員を選任する場合について流れを示します。

①評議員候補者の選任
・理事会にて、評議員候補者の選任を行います。
②評議員選任・解任委員会の招集
・評議員の選任は、評議員選任・解任委員会の議決事項です。
・各法人で作成している評議員選任・解任委員会運営細則等に基づき、評議員選任・解任委員会の招集を行います。( 評議員選任・解任委員会運営細則は理事会の議決により定められます。)
~通常は理事会で評議員選任・解任委員会招集を議決すると定められていることが多いですが、理事長が招集するとの定めもあります。
・特に規定がない場合には、理事会にて招集の決議を行います。
③評議員選任・解任委員会の開催
・評議員選任・解任委員会にて評議員候補者が「社会福祉法人の適正な運営に関する識見を有する者」である旨説明を行い、決議を行います。
・定款で規定された外部委員の人数の出席・賛成が必要です。
④辞任により退任した評議員の任期について
・辞任により退任した評議員は、新たに選任された評 議員が就任するまで、なお評議員としての権利義務を有することになります。
・補欠評議員の選任については、改めて選任の手続きを行う必要があります。
・補欠の評議員の任期は定款によって、任期の満了前 に退任した評議員の任期の満了する時までとすること ができます
➡ここが、以前説明した評議員の任期統一の際に問題になるところです。

○簡潔に、定款例に準拠した評議員選任の流れも示しておきます。

評議員候補者案の作成 (法人事務局)
          ⇓
理事会の招集通知 (理事長➡理事・監事)
          ⇓
理事会の開催 (評議員選任・解任委員会の開催の決議・評議員候補者の推薦)
          ⇓

評議員選任・解任委員会の招集通知 (理事会で定めた運営方法による)
          ⇓
評議員選任・解任委員会の開催 (評議員の選任)
          ⇓
新任評議員からの就任の意思確認

★以上の手続きは評議員選任の正当性を確保するために必要です。
もし手続きに瑕疵があれば、評議員の正当性が担保されず、評議員の選任に係る理事、監事や、その後の法人運営すべてが無効となってしまう危険性があります。(「えーっ、これじゃ評議員が適正に選任されてないことになる!ということは、その評議員が選任した理事・監事や、その後選任された理事長も無効?じゃ、新理事になってからの法人運営も無効になっちゃうの?」などと慌てる場面が、時たまあります。ご注意ください。)
よって、選任の流れをしっかり残すために、理事会、評議員選任・解任委員会の議事録には必要事項を記載して保管する必要があります。
(当然ながら、それらの理事会、評議員選任・解任委員会の開催自体が有効でなくてはなりません。)
★評議員を選任した評議員選任・解任委員会議事録、「えっ?どこ行ったかな?」と探し回ることのないようにしっかりと保管しておきましょう。理事会や評議員会の議事録と違って、普段あまり見返したりしないと思いますので、注意が必要です。

理事・監事の選任について

理事・監事の選任の一般的な流れも見ておきましょう。

①理事候補者の選任
・理事会にて下記の者を含む理事候補者の選任を行います。
(1)社会福祉事業の経営に関する識見を有する者
(2)当該社会福祉法人が行う事業の区域における 福祉に関する実情に通じている者
(3)当該社会福祉法人が施設を設置している場合にあっては、当該施設管理者
②監事候補者の選定
・理事会にて下記の者を含む監事候補者の選任を行います。
(1)社会福祉事業について識見を有する者
(2)財務管理について識見を有する者
・監事の選任推薦議案については、監事の過半数の同意を 得た上で、評議員会に提出すること。

★この同意は、よく漏れます。旧監事と新監事が全く同じ方であっても、旧監事の同意が必要になります。(社会福祉法第43条第3項により準用される一般法人法第72条第1項)同意の記録は理事会議事録に残しても良いのですが、同意書をもらうのが、漏れがなくおすすめです。

③評議員会の招集
・役員の選任は評議員会の議決事項です。
・評議員会の招集は理事会にて行います。
・評議員会の招集にあたっての注意事項
(1)理事会にて評議員会の日時等の議決が必要
(2)招集の議決を行った旨議事録に記載必要
(3)招集通知は評議員全員の同意があれば、省略可能
④評議員会の開催
・評議員会にて理事・監事候補者に各種要件に該当する者が含まれている旨説明を行い、決議を行います。
・議決は各候補者ごとに行う必要があります。
・各候補者ごとに議決を行ったことがわかるよう議事録に記載すべきです。
⑤辞任により退任した理事・監事の任期について
・辞任により退任した理事・監事は、新たに選任された理事・監事が就任するまで、なお理事・監事として の権利義務を有することになります。
・補欠の理事・監事の選任については、改めて選任の 手続きを行う必要があります。
・補欠の理事・監事の任期は定款によって、任期の満了前に退任した理事・監事の任期の満了する時までとすることができます

○こちらも、定款例に準拠した理事・監事選任の流れを簡潔に示しておきます。

理事・監事候補者案の作成 (法人事務局)
       ⇓
理事会の招集通知 (理事長⇒理事・監事)
       ⇓
理事会の開催 (理事・監事候補者の推薦・評議員会の招集決議)
※監事候補者の推薦には監事の同意が必要~しつこいようですが、これ、よくもれます。
       ⇓
評議員会の招集通知
       ⇓
評議員会の開催 (理事・監事の選任)
       ⇓
新任理事・監事からの就任の意思確認
       ⇓
新理事による理事会の開催(理事長の選任)

★任期満了による役員の選任が行われた際には、新理事による理事会により理事長を選任することとなりますが、その理事長選任に係る理事会については、役員選任の評議員会と同日に開催されることが多いと思います。何度も理事に集まっていただくのは大変ですから当然です。しかし、その場合には、招集通知省略の手続きが必要です。
何故なら、まだ新理事が確定していない一週間前に招集通知を発出することは物理的に不可能だからです。
➡ここも注意ポイントです。

社会福祉法人 役員等の選任について その1

役員の任期の統一についてお話しましたが、前提として、役員選任についての注意点を整理してみました。これから何回かに分けてお伝えしていきたいと思います。

 

評議員、理事、監事について

法人を運営していくためには評議員及び役員(理事・監事)が必要ですが、この役員等が法人運営の中核となるため、選任や業務執行、その記録としての議事録等について社会福祉法で厳密に定められています。

~役員等の選任に瑕疵があると、その後の法人運営全体が無効となってしまう危険性もあります。慎重な取扱いが必要です。

社会福祉法の役員等選任に関する注意事項を整理してみました。まず、役員等になる方の要件からまとめてみました。

役員等の要件

評議員の就任にあたっては、いくつかの条件があります。主な条件は次のとおりです。
(1)理事の員数を超えること。(通常、理事6人に対して評議員7人のパターンが多いですね。)
(2)理事・監事又は職員を兼ねることができないこと。
(3)各評議員又は各役員の配偶者又は三親等以内の親族が含まれてはならないことに加え、各評議員又は各役員と特殊の関係がある者も含まれてはならないこと。

理事の就任にあたっても、いくつかの条件があります。主な条件は次のとおりです。
(1)6人以上であること。
(2)社会福祉事業について熱意と理解を有し、かつ、実際に法人運営の職責を果たし得る者であること。
(3)社会福祉事業の経営に関する識見を有する者が含まれること。
(4)社会福祉法人が行う事業の区域における福祉に関する実情に通じている者が含まれること。
(5)施設を設置する場合は、当該施設の管理者が含まれること。
(6)理事本人を含め、その配偶者及び三親等以内の親族その他各理事と特殊の関係のある者が理事の総数の三分の一を超えて含まれてはならず、その上限は3人であること。

監事の就任にあたっても、いくつかの条件があります。主な条件は次のとおりです。
(1)2人以上であること。
(2)理事又は職員を兼ねることができないこと。
(3)社会福祉事業について識見を有する者が含まれること。
(4)財務管理について識見を有する者が含まれること。
(5)各役員の配偶者又は三親等以内の親族が含まれてはならないことに加え、各役員と特殊関係がある者も含まれてはならないこと。

★上記の下線の部分に誰が該当するかについて、法人として確定させておく必要があります。例えば、「財務管理について指揮権を有する監事」は誰ですかと問われれば、「この監事です」と答えられなくてはなりません。現況報告書の記載欄に「理事要件の区分別該当状況」等がありますので、理事ならば3つの要件それぞれに記載しておくと分かりやすいです。理事長は「事業の区域における福祉に関する実情に通じている者」でもあると思いますが、施設長を兼ねている場合は「施設の管理者」にしておくとよいと思います。

評議員の任期統一について

特例措置終了に伴う新評議員と現評議員との任期のずれについて、任期を合わせる方法をお伝えすると申し上げてから、随分時間が経ってしまいました。10月2日締切の補助金申請等に追われて遅くなりました。失礼しました。
任期を合わせる方法は、二つあります。(ありました。)
①新評議員選任の際に現評議員全員に一旦辞任していただき、新評議員と伴に再任する。
②現評議員の任期(来年の定時評議員会まで)に、新評議員全員が一旦辞任して、全評議員を同時に選任する。
以上二つですが、いずれの方法をとる場合でも、条件があります。定款で「補欠評議員の任期を退任した評議員の任期の満了する時までとすることができる」と規定していることです。一旦辞任した評議員を再任すれば、それは補欠評議員の選任とみなされるからです。定款で「補欠評議員の任期を退任した評議員の任期の満了する時までとする」と規定している場合は全員の任期は合わせることができなくなってしまいますので、定款の変更から始めなくてはなりません。(ずれた任期を引継ぐからです。)
上記①は評議員を追加選任する際の手順ですので、現在ではすでにタイミングを失っています。よって、評議員の任期にずれが生じてしまっている場合には②によって統一することになります。実は奥の手として評議員全員が辞任して、すぐに再任すれば、いつでも任期の修正は可能ですが、任期満了の時期に合わせた方が処理的にはきれいであると思います。
大切なのは、「ずれ」は「ずれ」として認識して、管理することだと思います。