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社会福祉法人 役員等の選任について その3

就任の意思確認について
さて、滞りなく役員等の選任手続きが完了すれば、最後に役員等の就任の意思確認が必要になります。この意思確認に際して、役員等から提出を受ける書類についても注意が必要です。

評議員、役員の選任については、委任契約により法人との関係性が成立します。つまり、法人からのオファーに相手方が同意することで契約が成立しますので、委嘱状、就任承諾書、宣誓書、履歴書が必要となるのです。
その中で、委嘱状、就任承諾書には任期を記載しますので、正しく記載されているかチェックが必要です。

ここで、役員等の任期の考え方について、もう一度整理しておきましょう。例えば、評議員については、社会福祉法第41条において「評議員の任期は、選任後四年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする」とあります。(伸長も可能ですが、今はちょっと置いといて)これを順に検討していきます。
まず、選任後四年以内とは、例えば平成29年4月1日選任されれば令和3年4月1日以内であり、その最終会計年度は令和3年3月31日までの会計年度となります。その会計年度に関する定時評議員会は通常令和3年6月に行われる評議員会になります。この時までが任期です。
つまり、選任後四年とはいつか?その日時点で一番近い決算はいつか?を考えればよいのです。~年度、~会計年度、~年~月等が入り混じると混乱してしまいますので、具体的日付で考えるようにすると、はっきりします。
念のためですが、スタートは選任日であって就任日ではありません。法改正後最初の評議員の任期について4月1日から起算するのは特例であって、その後は飽くまで選任日が起算となりますので、この点もご注意ください。

また、誓約書での確認事項(欠格事由・特殊関係の有無・反社会的勢力の者でない事の確認等)に漏れがないかの確認も必要です。特に特殊関係の有無確認については、評議員・理事・監事で法律の条文が異なるので要注意です。~具体的には用紙の取り違えに注意です。用紙を間違えただけであっても、法人としての確認義務を果たしていないことになってしまい、結構大きな問題になってしまいます。

★以前お伝えした理事の要件の(6)特殊の関係については、就任時の誓約書で確認することとなります。理事の誓約書が評議員用のものとなっていることもよくありますが、これでは特殊の関係を確認したことになりません。念のために用紙間違いがないか確認をしていただければと思います。
★なお、印鑑証明は必須ではありませんが、法人登記等の為に提出受けていれば一緒に保管してください。
★以上の意思確認資料については、各評議員、理事、監事毎にまとめて保管、ファイリングすることをお勧めします。インデックスに各自の名前を書いて夫々に意思確認資料を綴じるのです。この作業をするだけで、中身の確認がしやすくなり、ミスが格段に減ります。
★なお、監事についての上記の保管ファイルには、「監事の選任に関する評議員会の議案についての監事の同意書」の写しについても一緒に保管ファイリングしておくとよいと思います。

社会福祉法人 役員等の選任について その2

昨日ご説明した様に、要件を満たす方を役員等の候補としたら、続いて具体的な選任手続きに入ります。その選任手続きの注意点を次にまとめました。理事会、評議員会、評議員選任・解任委員会の開催順序やそれぞれに必要な議決事項の整理をしておくことが大切です。

評議員の選任手続について

一般的な、評議員選任・解任委員会で評議員を選任する場合について流れを示します。

①評議員候補者の選任
・理事会にて、評議員候補者の選任を行います。
②評議員選任・解任委員会の招集
・評議員の選任は、評議員選任・解任委員会の議決事項です。
・各法人で作成している評議員選任・解任委員会運営細則等に基づき、評議員選任・解任委員会の招集を行います。( 評議員選任・解任委員会運営細則は理事会の議決により定められます。)
~通常は理事会で評議員選任・解任委員会招集を議決すると定められていることが多いですが、理事長が招集するとの定めもあります。
・特に規定がない場合には、理事会にて招集の決議を行います。
③評議員選任・解任委員会の開催
・評議員選任・解任委員会にて評議員候補者が「社会福祉法人の適正な運営に関する識見を有する者」である旨説明を行い、決議を行います。
・定款で規定された外部委員の人数の出席・賛成が必要です。
④辞任により退任した評議員の任期について
・辞任により退任した評議員は、新たに選任された評 議員が就任するまで、なお評議員としての権利義務を有することになります。
・補欠評議員の選任については、改めて選任の手続きを行う必要があります。
・補欠の評議員の任期は定款によって、任期の満了前 に退任した評議員の任期の満了する時までとすること ができます
➡ここが、以前説明した評議員の任期統一の際に問題になるところです。

○簡潔に、定款例に準拠した評議員選任の流れも示しておきます。

評議員候補者案の作成 (法人事務局)
          ⇓
理事会の招集通知 (理事長➡理事・監事)
          ⇓
理事会の開催 (評議員選任・解任委員会の開催の決議・評議員候補者の推薦)
          ⇓

評議員選任・解任委員会の招集通知 (理事会で定めた運営方法による)
          ⇓
評議員選任・解任委員会の開催 (評議員の選任)
          ⇓
新任評議員からの就任の意思確認

★以上の手続きは評議員選任の正当性を確保するために必要です。
もし手続きに瑕疵があれば、評議員の正当性が担保されず、評議員の選任に係る理事、監事や、その後の法人運営すべてが無効となってしまう危険性があります。(「えーっ、これじゃ評議員が適正に選任されてないことになる!ということは、その評議員が選任した理事・監事や、その後選任された理事長も無効?じゃ、新理事になってからの法人運営も無効になっちゃうの?」などと慌てる場面が、時たまあります。ご注意ください。)
よって、選任の流れをしっかり残すために、理事会、評議員選任・解任委員会の議事録には必要事項を記載して保管する必要があります。
(当然ながら、それらの理事会、評議員選任・解任委員会の開催自体が有効でなくてはなりません。)
★評議員を選任した評議員選任・解任委員会議事録、「えっ?どこ行ったかな?」と探し回ることのないようにしっかりと保管しておきましょう。理事会や評議員会の議事録と違って、普段あまり見返したりしないと思いますので、注意が必要です。

理事・監事の選任について

理事・監事の選任の一般的な流れも見ておきましょう。

①理事候補者の選任
・理事会にて下記の者を含む理事候補者の選任を行います。
(1)社会福祉事業の経営に関する識見を有する者
(2)当該社会福祉法人が行う事業の区域における 福祉に関する実情に通じている者
(3)当該社会福祉法人が施設を設置している場合にあっては、当該施設管理者
②監事候補者の選定
・理事会にて下記の者を含む監事候補者の選任を行います。
(1)社会福祉事業について識見を有する者
(2)財務管理について識見を有する者
・監事の選任推薦議案については、監事の過半数の同意を 得た上で、評議員会に提出すること。

★この同意は、よく漏れます。旧監事と新監事が全く同じ方であっても、旧監事の同意が必要になります。(社会福祉法第43条第3項により準用される一般法人法第72条第1項)同意の記録は理事会議事録に残しても良いのですが、同意書をもらうのが、漏れがなくおすすめです。

③評議員会の招集
・役員の選任は評議員会の議決事項です。
・評議員会の招集は理事会にて行います。
・評議員会の招集にあたっての注意事項
(1)理事会にて評議員会の日時等の議決が必要
(2)招集の議決を行った旨議事録に記載必要
(3)招集通知は評議員全員の同意があれば、省略可能
④評議員会の開催
・評議員会にて理事・監事候補者に各種要件に該当する者が含まれている旨説明を行い、決議を行います。
・議決は各候補者ごとに行う必要があります。
・各候補者ごとに議決を行ったことがわかるよう議事録に記載すべきです。
⑤辞任により退任した理事・監事の任期について
・辞任により退任した理事・監事は、新たに選任された理事・監事が就任するまで、なお理事・監事として の権利義務を有することになります。
・補欠の理事・監事の選任については、改めて選任の 手続きを行う必要があります。
・補欠の理事・監事の任期は定款によって、任期の満了前に退任した理事・監事の任期の満了する時までとすることができます

○こちらも、定款例に準拠した理事・監事選任の流れを簡潔に示しておきます。

理事・監事候補者案の作成 (法人事務局)
       ⇓
理事会の招集通知 (理事長⇒理事・監事)
       ⇓
理事会の開催 (理事・監事候補者の推薦・評議員会の招集決議)
※監事候補者の推薦には監事の同意が必要~しつこいようですが、これ、よくもれます。
       ⇓
評議員会の招集通知
       ⇓
評議員会の開催 (理事・監事の選任)
       ⇓
新任理事・監事からの就任の意思確認
       ⇓
新理事による理事会の開催(理事長の選任)

★任期満了による役員の選任が行われた際には、新理事による理事会により理事長を選任することとなりますが、その理事長選任に係る理事会については、役員選任の評議員会と同日に開催されることが多いと思います。何度も理事に集まっていただくのは大変ですから当然です。しかし、その場合には、招集通知省略の手続きが必要です。
何故なら、まだ新理事が確定していない一週間前に招集通知を発出することは物理的に不可能だからです。
➡ここも注意ポイントです。

社会福祉法人 役員等の選任について その1

役員の任期の統一についてお話しましたが、前提として、役員選任についての注意点を整理してみました。これから何回かに分けてお伝えしていきたいと思います。

 

評議員、理事、監事について

法人を運営していくためには評議員及び役員(理事・監事)が必要ですが、この役員等が法人運営の中核となるため、選任や業務執行、その記録としての議事録等について社会福祉法で厳密に定められています。

~役員等の選任に瑕疵があると、その後の法人運営全体が無効となってしまう危険性もあります。慎重な取扱いが必要です。

社会福祉法の役員等選任に関する注意事項を整理してみました。まず、役員等になる方の要件からまとめてみました。

役員等の要件

評議員の就任にあたっては、いくつかの条件があります。主な条件は次のとおりです。
(1)理事の員数を超えること。(通常、理事6人に対して評議員7人のパターンが多いですね。)
(2)理事・監事又は職員を兼ねることができないこと。
(3)各評議員又は各役員の配偶者又は三親等以内の親族が含まれてはならないことに加え、各評議員又は各役員と特殊の関係がある者も含まれてはならないこと。

理事の就任にあたっても、いくつかの条件があります。主な条件は次のとおりです。
(1)6人以上であること。
(2)社会福祉事業について熱意と理解を有し、かつ、実際に法人運営の職責を果たし得る者であること。
(3)社会福祉事業の経営に関する識見を有する者が含まれること。
(4)社会福祉法人が行う事業の区域における福祉に関する実情に通じている者が含まれること。
(5)施設を設置する場合は、当該施設の管理者が含まれること。
(6)理事本人を含め、その配偶者及び三親等以内の親族その他各理事と特殊の関係のある者が理事の総数の三分の一を超えて含まれてはならず、その上限は3人であること。

監事の就任にあたっても、いくつかの条件があります。主な条件は次のとおりです。
(1)2人以上であること。
(2)理事又は職員を兼ねることができないこと。
(3)社会福祉事業について識見を有する者が含まれること。
(4)財務管理について識見を有する者が含まれること。
(5)各役員の配偶者又は三親等以内の親族が含まれてはならないことに加え、各役員と特殊関係がある者も含まれてはならないこと。

★上記の下線の部分に誰が該当するかについて、法人として確定させておく必要があります。例えば、「財務管理について指揮権を有する監事」は誰ですかと問われれば、「この監事です」と答えられなくてはなりません。現況報告書の記載欄に「理事要件の区分別該当状況」等がありますので、理事ならば3つの要件それぞれに記載しておくと分かりやすいです。理事長は「事業の区域における福祉に関する実情に通じている者」でもあると思いますが、施設長を兼ねている場合は「施設の管理者」にしておくとよいと思います。

評議員の任期統一について

特例措置終了に伴う新評議員と現評議員との任期のずれについて、任期を合わせる方法をお伝えすると申し上げてから、随分時間が経ってしまいました。10月2日締切の補助金申請等に追われて遅くなりました。失礼しました。
任期を合わせる方法は、二つあります。(ありました。)
①新評議員選任の際に現評議員全員に一旦辞任していただき、新評議員と伴に再任する。
②現評議員の任期(来年の定時評議員会まで)に、新評議員全員が一旦辞任して、全評議員を同時に選任する。
以上二つですが、いずれの方法をとる場合でも、条件があります。定款で「補欠評議員の任期を退任した評議員の任期の満了する時までとすることができる」と規定していることです。一旦辞任した評議員を再任すれば、それは補欠評議員の選任とみなされるからです。定款で「補欠評議員の任期を退任した評議員の任期の満了する時までとする」と規定している場合は全員の任期は合わせることができなくなってしまいますので、定款の変更から始めなくてはなりません。(ずれた任期を引継ぐからです。)
上記①は評議員を追加選任する際の手順ですので、現在ではすでにタイミングを失っています。よって、評議員の任期にずれが生じてしまっている場合には②によって統一することになります。実は奥の手として評議員全員が辞任して、すぐに再任すれば、いつでも任期の修正は可能ですが、任期満了の時期に合わせた方が処理的にはきれいであると思います。
大切なのは、「ずれ」は「ずれ」として認識して、管理することだと思います。